結論から言うと、ChatGPTは「この株は買いか」を決める道具ではありません。決算資料の読み込みや比較表づくりを短縮する道具として使うと、かなり便利です。
僕は投資候補を調べるとき、決算短信や決算説明資料を最初から最後まで読む前に、ChatGPTへ資料を渡して論点を整理させています。売上や利益の数字を抜き出すだけなら、手作業より速い。しかも、同じ指示を使えば複数社を同じ基準で並べられます。
ただ、AIの回答をそのまま投資判断に使うのは危険です。数字の転記ミスや期間の読み違い、資料に書かれていない推測が混ざることがあるからです。ここでは、僕が実際に使っている「資料を渡す→数字を確認する→比較する」流れを、コピペできるプロンプト付きでまとめます。
ChatGPTで株式分析をする前に準備するもの
用意するのは、分析したい企業の決算資料と、比較したい期間です。決算短信、決算説明資料、有価証券報告書など、出所がはっきりしたPDFを使います。ニュース記事の要約だけを渡すより、一次資料を直接読ませたほうが確認しやすいです。
今回は、次の条件で分析します。
- 対象は1社または2社
- 比較期間は直近の通期、または前年同期
- 見る項目は売上高、営業利益、利益率、会社予想
- 数字の出典ページを必ず残す
ChatGPTでは、ファイルをアップロードして内容を分析できます。画面にPDFを添付できない場合は、IRページから必要な表をテキストでコピーしても構いません。大事なのは、「どの資料の、どの期間を見たか」を最初に固定することです。

手順1:決算資料を要約させる
PDFを添付しても、いきなり「この会社は買いですか」とは聞きません。最初は、資料に書かれている事実だけを抜き出します。
添付した決算資料を、投資判断ではなく事実確認のために整理してください。
次の表を作ってください。
1. 対象期間
2. 売上高
3. 営業利益
4. 親会社株主に帰属する利益
5. 前年同期比
6. 通期会社予想に対する進捗率
ルール:
- 資料に書かれている数字だけを使う
- 単位(百万円、億円など)を省略しない
- 数字ごとに資料のページ番号を付ける
- 記載がない項目は「記載なし」と書く
- 計算した数字には「計算値」と明記する
このプロンプトで効いてくるのが、最後の4行です。AIは空欄を嫌って、それらしい数字を補ってしまうことがあります。「記載なし」を許可すると、資料にない情報を勝手に埋める癖を抑えられます。
出てきた表は、必ずPDFと照合します。僕の場合、まず売上高と営業利益を資料の表で確認し、そのあと前年同期比の符号を見ます。増収減益のようなケースでは、要約文だけ読むと印象が変わることがあるからです。
手順2:数字の意味を3つに分解する
数字を抜き出しただけでは、分析としてはまだ浅い。ここからは、業績が動いた理由を「事実」「会社の説明」「AIの仮説」に分けます。
先ほどの決算資料を、以下の3列で整理してください。
A. 資料に明記された事実
B. 会社が説明している業績要因
C. 資料から考えられる仮説
Cの仮説には必ず「仮説」と表示し、A・Bと混ぜないでください。
また、次の観点を確認してください。
- 売上の増減は数量、単価、為替のどれが主因か
- 利益率は前年同期から改善したか悪化したか
- 一時的な要因と、継続しそうな要因は何か
- 通期予想を据え置いたか、修正したか
ここで「仮説」を分けるのが肝です。決算資料には、「原材料価格の上昇」「海外事業の為替影響」のような説明があります。一方で、「この事業は来期も伸びそう」は資料に書かれていない、自分たちの解釈です。両者を同じ文章に混ぜると、事実と予想の境界が消えてしまいます。
僕はCの仮説を鵜呑みにはせず、追加で確認する項目のリストとして使っています。たとえば「利益率の改善が一時的かもしれない」と出たら、過去数四半期の推移や会社の補足資料を確認する。AIの答えを結論にせず、調査の次の一手に変えるイメージです。

手順3:2社を同じ条件で比較する
企業比較でありがちな失敗は、片方が通期、もう片方が四半期というように、比較条件がずれることです。ChatGPTに比較を頼む前に、期間と単位をそろえます。
添付したA社とB社の決算資料を比較してください。
比較条件:
- 両社とも同じ会計期間を使う
- 金額は原文の単位を保ったうえで、比較表では円換算しない
- 売上成長率、営業利益率、通期予想の進捗率を比較する
- 資料にない指標は推測しない
出力形式:
1. 比較表
2. A社だけにある強み
3. B社だけにある強み
4. 比較できない項目
5. 追加確認が必要な点
各数値の右側に、資料名とページ番号を付けてください。
「比較できない項目」も出させるのがコツです。AIは比較表をきれいに埋めようとしますが、会社ごとに開示項目が違うのは普通です。空欄を無理に埋めないほうが、結果として信頼できます。
ただ、利益率をAIに計算させた場合は、計算式も表示させます。
営業利益率の計算式を各社ごとに表示してください。
売上高と営業利益の原数値、単位、計算結果を並べ、
小数点以下の丸めによる差があれば注記してください。
計算結果は、電卓やスプレッドシートでも再計算します。AIが苦手なのは、難しい数学よりも「億円と百万円が混ざる」「前年同期と通期が混ざる」といった地味なミスです。
手順4:投資判断ではなくチェックリストを作る
最後に「買うべきか」と聞くのではなく、自分で判断するためのチェックリストを作らせます。
ここまでの分析をもとに、投資判断前に確認すべき質問を10個作ってください。
条件:
- 売買推奨や目標株価は出さない
- 資料で確認できた事実と、まだ不明な点を分ける
- 業績、財務、競争環境、株価の割高感、下振れ要因を含める
- 初心者でも確認できる質問にする
ここまで来たら、株価チャートやバリュエーションを別の資料で確認します。決算が良くても、すでに期待が株価へ織り込まれている可能性があります。逆に、数字が悪く見えても、一時的な費用や事業売却の影響かもしれません。
ChatGPTは決算資料の整理には強い一方、リアルタイムの株価や最新ニュースを常に正確に持っているとは限りません。株価、配当、制度、手数料など変わる情報は、証券会社や企業の公式ページで確認してください。
実際に使ってわかった、失敗しにくいコツ
一度に複数社の資料を大量に渡すより、1社ずつ事実確認してから比べたほうが安定します。いきなり「買いかどうか」を聞くと、もっともらしい結論に引っ張られやすいんですよね。
僕が毎回残しているのは、次の4点です。
- 分析に使った資料のURLと取得日
- AIが抜き出した原数値
- 自分で再計算した指標
- まだ確認できていないリスク
プロンプトもメモに保存しています。同じ企業を次の決算で再分析するとき、そのまま質問を使い回せるからです。分析の速さより、前回と今回を同じ物差しで比べられることのほうが大きい。
まとめ
ChatGPTで株式分析を自動化するなら、投資判断を丸投げするのではなく、決算資料の整理や数字の比較、確認事項の洗い出しに使うのがおすすめです。
流れはシンプルです。
- 一次資料を添付する
- 事実だけを表にする
- 事実・会社説明・仮説を分ける
- 同じ条件で比較する
- 最後は自分のチェックリストで判断する
これだけでも、決算資料を読むときの「どこから手を付ければいいかわからない」はかなり減ります。AIに答えを出させるより、判断材料を整えさせる。僕はこの使い方がいちばん現実的だと思っています。
生成AI活用の基礎ツール。
※この記事は投資助言ではありません。株式や投資信託などの金融商品には元本割れのリスクがあります。売買を行う場合は、決算資料、目論見書、証券会社の公式情報などを確認し、ご自身の判断と責任で行ってください。ChatGPTの出力も必ず原資料と照合してください。
参考: OpenAI「Data analysis with ChatGPT」、企業が公開する決算短信・決算説明資料(いずれも確認日: 2026年9月14日)
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